薔薇娼婦麗奈2




生娘、処女、どんな言い方でもいい。とにかく誰の影響も受けていない女は好きだ。その逆に遊び歩いている女も好きだ。結局俺は、女が好きで仕方がないらしい……。
麗奈は長いキスが終わると潤んだ目で俺を見上げる。言葉を口に上らせようとして、慌てて唇をかむ。そのしぐさが、艶めかしい。
「麗奈も飲むか?」
何事もなかったかのように、俺は麗奈に酒を勧めた。緊張が解けたのか、あきらめたのか麗奈はおとなしく俺の酌を受ける。
強い日本酒だというのに、苦もなく麗奈は飲み込んだ。
「おまえも酒に強いほうなんだな」
「強い?このお酒……そんなに強いの?」
「……飲んだことがないなんて、言うなよ?」
俺は苦笑を浮かべて、麗奈の頬を右手でなでる。ほんのりと頬が赤く染まって、麗奈のひとみが更に潤み始める。ちょうどいい感じの表情だ。非常にそそる。
麗奈は、気持ちよさそうに俺の手に頬を摺り寄せる。猫みたいな動作で、目を細めて麗奈は笑った。少し酔っ払っているようだ。だいぶ心が開放されている。
付け入るなら、今だ。
俺の本能がそう告げていた。麗奈の細い腕を取り、もう一度抱き寄せて今度は麗奈の首筋に顔を埋めた。
高価な香木を使って、着物を焚きこめたのだろう。やさしいいいにおいがした。首筋まで薄ら赤くなっている麗奈の白い肌に、唇を落とす。
時折、跡をつけるように強く吸い上げる。その度に、麗奈の体が震えるのが良い。狩人がじわじわと獲物の子ウサギを追いつめていく感覚。そんな錯覚にすら囚われる。
耳のあたりに息を吹きかけると、ため息とも悲鳴とも取れる声を麗奈が上げた。
そうか、耳が弱いか……。
俺は声に出さず微笑むと、耳たぶをなめあげ甘噛みした。麗奈は俺からよけようと、首を背けようとするが、きつく抱きしめられているので、逃れることができない。逃れようとする反面、腕のほうは俺の首にしっかりと巻きついている。そんな矛盾がかわいらしいと思う。
最初はくすぐったいだけだったみたいだが、だんだん感じてきたのか息を呑みこむときが多くなってきた。かなり敏感な娘みたいだ。
「や……私、許すなんて……」
俺が、耳から首筋を伝って鎖骨のあたりに舌をはわせると麗奈は呟いた。
着物を肩が露出するように脱がされて、ようやく俺がヤる気なのに気がついたみたいだ。
下っ端の女郎ではなくて花魁ともなれば、その夜、その男に抱かれるか抱かれないかは決める権利がある。花魁にはそれだけの格というものがあるからだ。話し上手で、聞き上手。それだけで癒されてしまうし、焦らされれば焦らされるほど燃えがるという効果を狙っていることもある。
だが、俺は焦らされるのは好きだが、我慢をするのはごめんだ。
大体、今日は女を抱こうと思っていたのだから。
「ここまできて、許さない?」
俺は麗奈の体から顔を上げて、麗奈に問い掛けた。麗奈は酒を飲んでほんのり赤くなった顔に、さらに羞恥のために頬が上気していた。
「それは……」
麗奈が、言葉に詰まっている間俺はかまわず一枚ずつ着物を脱がしていく。ゆで卵の殻はゆっくりと向いていくのが好きなのと同じだ。
「それは?」
意地悪にも俺は、聞き返す。そうしながらも右手は麗奈の胸元に降りていく。左手は逃げないようにしっかりと麗奈の体に巻きつけておく。
逃がすもんか。
「だって、……初めて来ていきなり……あっ」
言葉を続けようとして、麗奈は驚いたように声を上げた。俺が、襦袢の上から胸の膨らみを揉み出したからだろう。
「や…」
泣きそうな声で、麗奈は呟く。呟くが力のこもった声ではない。羞恥と不安が入り交じった、助けを求める声。
「や…っていったって、いずれどっかの男に抱かれるのなら、今でもいいんじゃないの?俺なら麗奈を気持ちよくさせてあげれるよ」
ようやく本当に観念したのか、麗奈は口を閉じ、黙って俺の愛撫を受けている。
俺は襦袢も引き剥がして、舌を鎖骨から徐々に下に降ろしていく。
胸の先端をなめあげると、徐々に麗奈の息が上がっていくのがわかる。
さすがに座敷で抱えたままヤるのは可哀相かな……。
ちらっとそんなことを思った俺は、乳房から唇を放し麗奈に口付ける。
「向こうに行こうか……」
俺は麗奈を抱き上げて、屏風の裏に回った。そこにはお決まりのように布団が敷かれている。これだけはどこの女郎屋も変わらない。
机には、麗奈が持ってきたときには熱燗だった日本酒がすっかりさめておかれている。
まだまだ、夜は長い。


つづく